要件緩和、使いやすさが向上した小規模宅地特例の改正/平成25年度税制改正

 相続税は基礎控除の4割カットで増税感が高まるなか、いくつかの減税策が盛り込まれています。その中で、注目しておきたいのが「小規模宅地特例」の要件緩和。相続対策は不動産対策とよく例えられますが、この特例は不動産の相続対策で最も有効なもの。今回の改正により面積要件が緩和され、使いやすくなっています。

居住用宅地の適用面積が240m²から330m²に拡大
居住用宅地と事業用宅地の完全併用可能

 小規模宅地等の特例とは、相続人が相続した自宅や会社の土地・建物などを相続税の支払いのために手放さないですむように、一定の条件を満たず場合、80%減額という大幅な相続税の評価減を受けられる制度。つまり、もともとの相続税評価額が1億円であった土地もこの特例を受けることができれば80%減額を受けた2,000万円で相続税が計算できることになります。
 改正前の段階では要件さえ満たせば、240m²までの居住用宅地について相続税評価を80%減額できました。それが面積について今回330m²まで拡大。また会社や工場として使っている事業用宅地については400m²まで80%減額が可能なのですが、改正前は居住用宅地240m²と事業用宅地400m²の両方を限度一杯使うことはできず、両方合わせて400m²までの適用でした。今回の改正により併用が完全に認められ、330m²と400m²を合計した730m²まで80%減額できることとなりました。

 改正前は相続人が奥さんとお子さん2名の場合、相続財産が8,000万円以下なら相続税はかかりませんでしたが、改正により基礎控除が4割カットされ相続財産が4,800万円以下でなければ相続税が発生することになります。都心部など地価の高いところに土地を持っている方ではこの小規模宅地特例を使えるか使えないかによって、払うべき相続税額に大きな違いが出てきます。使えずに納税資金がなければ最悪、自宅を手放さなければならないということにもなりかねません。

二世帯住宅と老人ホーム入所についても要件が緩和

 そして小規模宅地特例の改正で見逃せないのが「二世帯住宅」と「老人ホーム入所」の扱いが緩和されたことです。もともとこの特例は相続人と被相続人が同居しているということが前提だったのですがそれでは二世帯住宅はどうなるのかということが以前から問題となっていました。
 同じ建物でも親子で一階と二階に分かれて住んでいて、入口が別々の場合、中でつながっていないと特例の適用が受けられなかったのですが、改正により中でつながっていなくても適用が受けられるようになります。
 また同居していた被相続人が老人ホームに入っていた場合も特例の適用を受けるためには厳しい条件がつけられていましたがこれも緩和されました。

改正前は以下の4つが要件でしたが
   1.介護が必要なために入所
   2.入所後も自宅を他人に使わせていない
   3.いつ戻ってきてもいいように自宅を維持管理している
   4.ホームの所有権や終身利用権を取得していない

改正後は以下の2つの要件となりました
   1.被相続人に介護が必要なため入所した
   2.自宅を貸し付け等の用途に使われていないこと

 自宅や会社の敷地などとして使っている事業用の土地の相続税評価を大きく下げることができる小規模宅地特例は、不動産を使った相続対策では最も効果の高いものです。今回の改正内容や活用方法については最新情報を常に確認しておくことをおすすめいたします。


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