相続・贈与税改正の“ここだけ”ポイント/平成25年度税制改正案

 今回の相続・贈与税に関する改正案では、基礎控除の引き下げにより今まで対象とならなかった方が課税対象となったり、最高税率が50%から55%に上がり税率構造にも改正が入ったりしますので増税感は強いものです。一方、減税面では小規模宅地の特例の要件が大幅に緩和されたり、子や孫への教育資金であれば一人1,500万円まで非課税で贈与できたりする改正が盛り込まれています。うまく使えばかなりのメリットが期待できます。中小企業の経営において相続は社長個人の問題だけには留まりませんから、税理士の方でなくてもその概要は押さえておきたいものです。


改正により相続税の基礎控除は4割減、申告件数は1.5倍に

 今回の相続税改正案で影響が大きいのは、「基礎控除」の大幅引き下げです。現行制度では相続人が奥さんとお子さん2名であれば、相続財産が8,000万円以下なら相続税はかかりません。しかし改正案では相続財産が4,800万円以下でなければ相続税が発生することになります。これにより相続税の申告件数は1.5倍に増えるといわれています。また相続・贈与税の最高税率が現行の50%から55%に引き上げられます。改正時期は平成27年1月1日以降の相続からとなります。

 相続財産に占める不動産比率が高い場合には納税資金の準備が課題となり、相続税の納税のために不動産を売却するということも増えてくるのではないでしょうか。


小規模宅地の特例が拡充され、土地評価を大幅に減額できる可能性があります

 一方減税策としては、相続税の土地評価を8割減にできる小規模宅地の特例が拡充されます。特定居住用宅地等の適用面積が240㎡から330㎡に拡大され、現行制度では許されていない特定居住用宅地等と特定事業用等宅地等との完全併用が可能となります。これにより亡くなった経営者の自宅330㎡と会社や工場などの土地400㎡まで相続税評価の80%減額が完全に併用できます。改正時期は平成27年1月1日以降の相続からとなります。


子や孫への教育資金なら一人につき1,500万円まで非課税

 そして今回、注目されている減税策が「教育資金贈与」。これは子や孫に教育資金を贈与した場合、ひとり1,500万円まで非課税となるもの。現行制度でも祖父母が孫の教育資金をその都度、負担する時には非課税扱いでしたが将来の分も一度に渡すと贈与税の対象となります。今回の改正では「教育資金」として一度に渡しておくことができるようになります。使い方のイメージは金融機関と信託契約などを結び、孫名義の口座に祖父母が一括で資金を入金。入学金の支払いが必要になったときにその証明書を金融機関に提示して引き出しをするという感じです。なお金融機関に預け入れされた資金は、孫などが30歳までに教育資金として使い切らないと、贈与税が課税されます。この制度は平成25年4月から平成27年12月末までの措置です。
 なお非課税の対象とされる教育資金の範囲や金融機関の扱いなどが明らかになっていませんので、ここは気になるところです。

 その他の減税策としては、相続時精算課税制度における贈与者の年齢要件が65歳以上から60歳以上に引下げられ、受贈者に孫が加えられました。また以前、お知らせしましたが事業承継税制については、雇用確保要件などの緩和、利子税の引き下げ、 事前確認の廃止など、今まで使い勝手の悪かった適用要件が大幅に緩和されています。

 基礎控除の引き下げや税率のアップなど基礎的な部分で増税が予定されている相続・贈与税改正ですから減税制度を有効に活用して乗り切っていく必要があります。

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